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RD 潜脳調査室 #11「純正律」

2008.06.20 Friday 20:23
 これはいい老人萌えアニメですね。

 na・ture [名]
 ━━ n. 自然(界,状態); (N-) 造物主, 自然の力; 原始的状態
 [生活]; 自然の姿, 実態; 天性, 性質; …の性質を持った人; 本質


 英語でnaturalというと、自然で飾らないという意味のほかに、天性の才能を持った人やその人の状態といったニュアンスで用いられる場合があります。
 よく、あの人は天然だとかっていい方しますけど、“天然(ネイチャー)”というのが英語圏では、“天才”と同じ意味を持つものだったり。日本でもあんまり違いはないと思いますが、欧米では努力で得られるスキルとはまったく異なる次元から得られる、天性の素質、才能をネイチャーと呼び、そのネイチャーが他を圧して優れた者のことを天才というわけで。つまり、天才とは努力によって“なる”者ではなく、生まれついて自然にそうで“ある”者だと。
 今回のエピソードでいうなら、久島はスキルの持ち主ではあったけどネイチャーがなく、反対に一ノ瀬はネイチャーを持ちスキルは後天的に身に着けた、ということになるでしょうか。面白いのはそのネイチャーを持つ一ノ瀬が、スキル面ではずっと久島にコンプレックスを抱きつづけている、ということで。そのために久島が自分の演奏を聴いてくれないのは、いまだにスキルが未熟であるからだと思い込むほどに。実際には、久島はむろん一ノ瀬のネイチャーを羨望しコンプレックスを抱いているからこそ、聴かないわけなんですけど。
 ミナモを牽引役として展開する今回のお話は、テーマをあえていうなら、天才と凡才の差…ネイチャーとスキル、日本語に直すなら自然と技術の格差、ってところになるんだと思いますが、一ノ瀬もそうだし、それから地球律という独特の概念によって地球という生命体の、“声”を聞く天性の才能を持った波留真理、鋭い直感で物事の本質を把握する力を持つミナモも、揃って義体化していない“自然”な肉体のままである、というのが興味深く象徴的です。
 彼らは自覚的なのか無自覚なのか、肉体も人間存在を成り立たせている重要な要素であって、そのために肉体を自然な状態から切り離せば魂も相応にネイチャーから遠ざかることを知っているように見えます。久島はバイオリンをやめた時点で、自分にネイチャーがないことを悟ってしまったから、全身義体化にもさほど躊躇はなかったんでしょうけど、生身であることにこだわるということは、才能を自覚する人間にとっては、重要なことだし譲れないことなんでしょう。てか、修練で得られるスキルで満足できるのなら、音楽演奏もロボットにやらせたってじゅうぶんなんですけど、あいにく人間というやつは人工的かつ後天的に得られるものだけではなく、それにプラスアルファした何物かにひどく惹かれる存在でもあるんですよね。その、ロジカルには説明しがたい何物かをこそ、才能と呼ぶんだと思いますが。
 …ってことはだ、必然的に才能はいずれ衰え、枯れていくことを免れないものである、ということでもあるわけだよな。
「わたしの老いた身体が、わたしに音楽を奏でることを許さないのです」
 と一ノ瀬がいっていたように、彼が生身の肉体であり、魂においてもナチュラルであることにこだわる以上は、老いがそのネイチャーを蝕み殺すことからは逃れようのない現実でしょう。これは真理にとってもまったく同じで、潜ること、海を介して地球の声を聞くことに長けた能力も、肉体の衰えで潜れなくなったという外的要因によって、その存在理由を失うときは確実に訪れるわけで。だからっつって、彼らふたりが義体化することもないでしょうが。いうまでもなく、そんなことをしたら彼らの才能は才能ではなくなり、単なる技術と堕してしまうんですから。

 今回の話で、才能と老いということが扱われたのはなかなか興味深いというか…こういう老人萌えを中心に据えた、主だった登場人物三人が揃いも揃って老人であるアニメも珍しいというか。
 精神/肉体ともに老いた一番一般的な老人はいうまでもなく一ノ瀬ですけど、真理は真理で肉体の老いを意識せざるを得ないことから、精神もそれ相応に若者のままというわけにはいかず、久島もまた、自身のネイチャーを失った経験が今回語られたことで、その外見に反して、やはり“老人”であったことが確認されます。
 久島が身体を人工化することで、あっさり肉体と魂のネイチャーを捨てちゃったのも、自分が凡人であることを認めた諦観があったからでしょうが、そんな彼が“天才”である真理をサポートする役割に自らを任じているのは、いったいどんな気分なんでしょうか。
 彼は地球律の存在を信じていますけど、それは真理が信じているから信じているのであって、久島自身は地球の発する声を聞くこともできず、地球律そのものを体感することもできません。ネイチャーを持たないがゆえに、肉体を失い、同時に老いによるそれらの衰微や死という、才能ある者の不安や恐怖を免れた代わりに、才能を持つ者たちが得られる歓喜や充実には決して到達できない久島にすれば、自分の役割にいささか寂しいものを感じているのかもしれません。
 そうはいっても、自然と技術との融和はあり得るはずだ、との見解に立つ彼なら、ネイチャーとスキル、天才と凡才との隔絶や溝を、それはそれとして受け入れつつも、だからといって悲観一色に染まってすねたり自分を哀れんだりという気にはなれないのではないか、とも思います。年をとることにもいいことはあって、それは、若い頃にはなかなかできがたかった、“ありのままの自分を認める”というのができるようになるということでしょう。天才には天才の、凡才には凡才の、それぞれできることがあり役割がある…天命を知るというのは実はそれほど難しいことではなく、自分にできることとできないことを知るということでもあって、その天命を知り、自分の限界の中で精一杯に役割や責任を果たすことで、“凡才の矜持”が生まれてくるのではないでしょうか。
「わたしは音楽以上のものを見つけ、追い求めてきた。簡単に追いつかれてはかなわない」
 久島のこの言葉は、そうそうあっさりと負けてはやらないぞ、という、まさに凡人の矜持でしょう。その後で真理が、自分にも才能が備わっていればいいが、なんてことをいったのに対し、彼は直接的には応えず、
「愛のない人間はいない」
 と返しています。
 愛、熱意、執着、情動…あるいは才能といった“ネイチャー”は、本来誰にでも備わっているものではないかと思いますが、天才の境地にたどり着けなかったからといって、自分の中のそれらのネイチャーをすべて否定する必要もないはずです。もしこの記事を読んでおられるあなたが、ある分野や方面において、天才と呼べるほどに才能を持つ人であったとして、その才能を羨望する凡人のひとりたる管理人は、次の言葉を贈らせていただきます。
「少年老い易く学成り難し」
 あなたの貴重なネイチャーはいずれ必ず老いにつかまるときがくるのだから、それを無駄に飼い殺すことなく、今をしゃにむに焦る“義務”が、あなたにはあると…そんな忠告をするのはむろん、それが凡人たる僕の義務だと認めているからなんですけどね。
 これもまた、“凡才の矜持”のひとつってことで。





↑電脳化社会みたいな誰でも比較的容易にスキル習得ができる世の中では、ナチュラルな才能は今よりずっと貴重なんだろうな、とか思う管理人に拍手でもどうぞ。





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