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RD 潜脳調査室 #3「リダイブ」

2008.04.24 Thursday 12:19
サヤカ「自分の年を自覚してないんじゃないの? ハル爺」

 50年の“ウラシマ・ドライブ”期間があったとはいえ、爺は精神的には30代前半っすよ…。

 リュック・ベッソン監督の「グラン・ブルー」で、ジャン・マルク・バール演じる主人公のジャックが、
「深く潜るのは怖い」
 というシーンがあったっけ。恋人のロザンナ・アークェットがどうして? と理由を訊ねると彼は、
「地上に戻る理由がなくなるから」
 と応えるんですけど。
 この映画は伝説の素潜りダイバー、ジャック・マイヨールを有名にしましたが、ご存知の方も多いように、2001年に彼は、自宅で首吊り自殺しているのを発見され、74歳で“地上に戻”らぬ人となりました。晩年には鬱病を患っていたとも聞きますが、彼がなぜそのような行為で自らの生を終わらせたのか、真意はむろん、本人以外の誰にも不明です。
 マイヨール氏が亡くなる直前、確か「サライ」だったと思うんですけど、雑誌に彼のインタビューが載っていたのを、管理人は読んだことがあります。海の中で4分以上も息を止めていられるという、到底74歳とは思えない驚異的な身体能力を持つ彼が、そのとき老いの問題に関して訊かれて答えたのは、
「僕自身は肉体の表層なんかじゃなく、精神を大切にしたい」
 という言葉でした。そのインタビューのページには、彼の上半身裸の写真も載っていて、僕はそれを見て、もし俺が70代でこの身体なら、裸身をさらすのも嫌じゃないかもな、と思ったのを覚えています。
 自殺というかたちでの死に、なぜ? と疑問を持った人は、僕を含め少なくなかったでしょう。やはり高齢のあるダイバーはこういいました。
「それが老いというものだ」
 あるいはその通りなのかもしれません。今月の13日に36歳になったばかりの僕には、その言葉の意味が理解できるとはいい難いですが。嘘偽りなく述べるなら、理解したくもありません…少なくとも、今はまだ。

 医学の分野に心身医学、心療内科なんてのもあるくらいだから、心と身体は不可分だという考え方も、今ではそうそう突飛なものではないんでしょう。
 科学的な証明を待つまでもなく、心と身体が互いに影響を及ぼし合うということは、僕らも経験的に知っていることです。自分が36歳相応の精神年齢かったら怪しいもんですが、20代の頃に較べりゃ明らかに生え際は後退しましたし、その事実が自分に、年齢というものを自覚させてくれ、相応の心理的変容を促してるのも確かですし。
 ま、ハル爺に較べたら、老いを肉体に刻むことと心に刻むこと、その両者のバランスに、さほどの齟齬を感じずにすむんだから、僕はずっと幸せじゃねーかと。今の自分がいきなり80歳の肉体を持たされたら、とてもじゃないが簡単には適応できんでしょうし、同様に、性同一性障害なんてのも、僕にはちょっと想像を絶しすぎていて、これまた自分がそんなことになったとしても、適応できそうにありません。
 心身の一致/不一致、ないしは調和/不調和ってのは、物語のかなり意識的なテーマなんでしょう。でなかったら、80歳の老人の身体と30代の青年の精神を持った人物が、主人公に設定されるわけがありません。今回僕は、真理がひたすら海へ戻りたいと焦るあまりに、無茶を繰り返す様を見て、
「若いなあ」
 と、思わず呟いちまったんですけど、外見年齢30代か40代、実は82歳の久島部長も、きっと同じことを内心で思ったんじゃないかと。真理の精神は肉体との均衡を失っており、だから、サヤカのいった台詞、
「自分の年を自覚してないんじゃないの?」
 ってのは、残念ながらその通りなんですよね。もっと正確にいうなら、自覚していないのは年齢というより、それも含めた、彼本来のパーソナリティなんでしょう。
 普通に考えたら、電脳の海で年齢という、肉体的な条件が問題になるなんて、おかしな話です。実際2話では、見事に彼は事態を収拾に導く活躍をしたわけですし。その際には、メタル内での真理は老人ではなく、本来の青年の姿に戻っていました。
 今回前半のテストでは、この“変身”がなく、彼は老人のままで潜り、そしてテストに失敗します。この変身はようするに、彼の自我の姿なんでしょうが、変身できなかったということは、自我を形成する重要な要素…この場合は“身体”が伴っていなかった、ということではないかと。
 これは、精神と肉体はワンセットであるという、メタル/リアル、あるいは内部/外部の相関性、対応関係といったところにつながることなのかもしれません。
 僕らは宗教的概念とか古くからの通説とか、あるいは文学的な修辞とかによって、なんとなく肉体と精神とはそれぞれ独立した存在であり、身体は魂の容れ物である、みたいなイメージを持ちがちですけど、でも、それが真実なのかはわからないし、確認もできないわけですよね。
 むしろ魂とは、皮膚や骨や血、脊髄や神経、さらには組織や細胞の一個一個に宿るものかもしれない…臓器移植手術を受けた人が、食べ物の好みや性癖、記憶まで変わってしまったり(記憶転移)、身体の一部を切除した人が、切除した部分の痛みを訴えたり(幻肢痛)といった事例があることなどを考えると、そっちのがありそうな話に思えてきます。
 もともと真理はウラシマ・ドライブによって、肉体と精神にある種の不適合をきたしてました。それが、なまじメタルというもうひとつの海を与えられたせいで、両者のいまだ不一致、それによる自我の不全や不均衡をきちんと自覚しないまま、性急に海に戻ろうとします。
 もうひとつ、彼にとって“海”とはあくまでリアルの海であり、メタルのことを、
「海そのものだよ」
 といってはいるものの、最終的にリアルの海に還るための、リハビリのように受けとってるところがあって…そのうち久島みたいに義体化して、心身の不一致の解消をはかる気でいたのかもしれませんが、まあとにかく、彼の視野に入っていたのは、肉体ではなく精神、メタルではなくリアル、そして、地上ではなく海、と、相関関係にある二者のうちの、常にどちらか一方だけだったわけで。
 おかげで久島が、メタル内での意識の流出に言及しても、
「海といっしょなら本望さ」
 なんて、「グラン・ブルー」の主人公みたいなこといっちまってたり。身体性を伴わない意識の喪失が、“死”と呼べるのかなあ? せいぜいが脳死と呼ぶべきだと思いますが…そこら辺は、医学的にも倫理的にも面倒な問題を孕むので、深くは突っ込みません。が、とりあえず、不完全な自我のまま潜るとメタルに吸収されて危険だ、とはいえるんでしょう。もうそのまま、自我同一性の危機って話ですな。そういや、サブタイの英題が”identity”ですが。

 で、結局のところ、その問題に答えを出したのは、前回同様、カナヅチなおかげで地上専門のミナモでした。
 しかし、“安全安心”ってまた、直感的なフレーズだなあ。真理や久島もさすが直感を信条にするだけあって、それだけで通じてしまいましたが。
 なぜ海に潜るのか? を考えるというのは、なぜ地上で生きるのか? を考えることと同じなんじゃないか、とか、先のジャック・マイヨールの死と合わせて、思ったりもするんですが、だとしたら地上を意識しないで海に潜ることは、肉体を喪失した精神というような、存在や行為の不全、不均衡を抱えることになるんじゃないかという気がします。同様に、現実を喪失した虚構、老いを意識しない若さ…もっというなら、死のない生、なんてのも、なにかが欠落した、バランスの悪い状態といえるのかも。
 海に溶けてもいいと思っていた真理が、地上へ意識を向けたとき、彼は自分の“身体”を…完全な自我をとり戻し、本来の姿に戻って地上へ…リアルへと浮上しました。不思議なことには、彼を見たミナモの目にも、本来の真理が映ったようです。それは単に目の錯覚だったのか、それとも、例によって彼女の鋭い直感が導きだした、本質の姿だったのか…ともあれ、地上に還ったからこそ、真理は確信を込めていいます。
「メタルは僕の新しい海だ」
 なんか、ル・グウィンの「ゲド戦記」を思い起こしますな。真理が地上を見出したときに同時に海を見出したというのは、「ゲド」的ないい方をするなら、そのことによって、分裂した自我の片面、己の影を受け入れ、彼は“全き者”となった、ってことなんでしょう。





↑心身の不一致に悩むことは特にないものの、後4年で不惑か…とか思うと、なんか微妙な気分になってしまう管理人に、激励の拍手をぜひ。





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