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レ・ミゼラブル 少女コゼット 第46話「ジャヴェールの正義」

2007.11.19 Monday 19:20
 えー先に不満点から片づけたいと思います。
 ヴァルジャンと別れた後のジャヴェールが、橋の上で悶々と葛藤する場面は、もうちょっとサラッと、あんまりペラペラ内面告白とかしないかたちでやってほしかったかな…。まあ、松山タカシさんの熱演が見られてよかったんですが、
「わたしは間違っていないっ!!」
 と激昂するところは、前回のジャン・ヴァルジャンの、
「ぬおーっっっ!!!」
 同様、ちっと笑ってしまいました。

 …と、不満はそんだけです。
 今回のお話は原作からの大幅な改変があるんで、原作派からは、やっぱあれこれ意見が出てくるでしょうし、それは当然なんですが、テーマ上の問題からガヴローシュ生存には文句をつけた僕的には、今回はじゅうぶんに許容範囲内です。つか、変な話、今回ジャヴェールが生き残ったことで、僕はある意味、原作以上に原作のテーマを掘り下げた結果になってるんじゃないか、とか思うんですが。
 ジャヴェールのあの硬直した性格からすると、信念に矛盾した行動をとってしまった場合の選択肢はふたつしかないわけで…つまり、矛盾を正すか、自分を罰するか、ですけど、アニメでの彼は結局どちらもとらずに、矛盾を呑み込んだまま存在しつづける、という、ある意味じゃ死ぬより厳しい生き方を選ぶことになりました。人間としてのジャヴェールはこれで救われましたが、警察官として、公僕としての彼は清廉さを失い、その分だけ新たに罪を背負ったともいえるわけで。
 “罪人”に“罪”を課されることで赦され救われるという、このなんという矛盾…でも、人間っちゅーのはそういう不可思議で曖昧模糊とした、白黒きっちり条理で分けられん現実を直視しながら、生きてかなきゃならん生き物であるのは確かでしょう。
 生が義務なら、これまでよりあやふやな信念と、これまでより大きくなった矛盾を抱え込みながら…ってことは、別段ジャヴェールの苦悩は綺麗さっぱりなくなったわけじゃなく、むしろより深くなった、ともいえるんですが…、それでも複雑で捉え難い人間という存在と、関わり合って義務を遂行していく、というのも、また彼らしいと思います。

 で、今までのような、ある意味単純な生き方は、もはやできなくなったジャヴェールですが、彼をそんなふうに変化させられたのは、やはりヴァルジャンなればこそ、と思えます。別にヴァルジャンの聖人君子ぶりがジャヴェールの改心を促したとか、真心が届いたとか、そんなことをいってるんじゃありません。これまでの因縁、確執、対立からくる情念のぶつかり合いから、このふたりは人生の一部を共有していて、いってみれば他人ではなくなってた、ということで。
 ニーチェの言葉に、人をもっとも高めてくれるのは、愛ではなく憎悪だ、というのがあったと思うんですけど、愛情が人を安らかに、満ち足りた思いにさせてくれるとすれば、憎悪は人を駆り立てる感情であって、そして人が大きな成長や変化をするのは、大抵は休んでるときじゃなく行動しているときだ、というのは、確かにいえることだと思います。
 ということは、恋人や友人に守られ、頼っているときよりは、自らを奮起させてくれる、敵やライバルに刺激されるときのほうが、人はより大きく成長できるチャンスに恵まれる、ってことっすね。人格円満すぎて敵のひとりもいない人は、人としてはそこで安定してしまうがゆえに、可能性も止まってしまうというのは、実際あり得ることですし。
 十年以上もの間、“敵”を追いつづけたジャヴェールは、その敵の存在によって常に駆り立てられ、動きつづけていました。だからこそドラスティックに(しかし決して無理があるわけではなく)、成長し、変化を遂げることもできたんでしょう。しばしば自分に最大の恵みをもたらすのは、味方ではなく敵である、というのは、そういう相手を持った経験のある人なら思い当たることなんじゃないでしょうか。
 とはいえ、大きな変化を与えてくれるほどの敵ともなれば、卑小な存在であってはならないわけで…その意味じゃテナルディエは、絶対にヴァルジャンの敵にはなり得ないし、彼によって変わりもしないでしょう。ミリエル司教に出会ったときのヴァルジャンも卑小な存在ではあったけれど、人間や社会や現実への憎悪に満ちたかつての彼の視点は、司教の慈愛とは真っ向敵対するもので、しかし、激しい葛藤の末にヴァルジャンが変化に至ったのも、要は、心の奥底で変化を求めていたからじゃないでしょうか。別のいい方をすれば、絶望しきれなかった、ということですね。
「人は変わることができる」
 という言葉は、おそらく変わりたいという望みをかすかにでも残している人にとっては、真実といえるでしょう。自称ニヒリストやペシミストが考えるほどには、人は性根から悪人ばかりではなく、今よりも善い人間になりたいとか、善い生き方がしたいとか、潜在的に願ってる人は、結構たくさんいるものです。
 きっかけも、それを生かせなければ意味がないように、ミリエル司教がヴァルジャンに与えたものと同じものを、テナルディエに与えたとして、同じ変化まで期待できるかといったら、僕にはどうだろうかという気もします。以前に彼はマリウスから援助を受けてますけど、それによってなにかが変わったとはいえませんし。
「求めよ、さらば与えられん」
 という言葉に倣うなら、テナはもともと救いを求めてないから、与えても受けとりはしない、ってことですね。これまた別のいい方をするなら、彼はすでに自分自身に絶望しきってるんでしょう…本人にその自覚があるかはわかりませんが。

 ちょっと話が脱線しましたけど、ジャヴェールがヴァルジャンの言葉を呑んで、マリウスを届けにジルノルマンの屋敷へ向かうことを承諾したのも、己の信念を曲げてヴァルジャンを逃したのも、彼を自分と同等の“敵”として認識し、熟知していた経緯があったからだと僕には思えます。この男は犯罪者だが、同時に単なる犯罪者ではない…少なくとも無視できない“なにか”がある、と、うっすらとでも感じていなければ、最終的にあんな真似をするはずもなかったでしょう。
 第44話でヴァルジャンに命を救われてから、急に考えを変えたわけじゃなく、十年もの間追跡しつづけた結果としての、あの翻意があったと思うべきです。それだけの時間をかけて、やっと彼は仇敵の本性にたどり着いたんですが、たどり着いたところで敵とする理由がなくなった、という辺り、僕にはこの種の敵対関係の興味深い一面が感じられます。
 つまり、ジャヴェール自身はおそらく気づいてなかったんでしょうが、彼はヴァルジャンを理解したかったわけですね。そして理解できた瞬間に敵対関係も終わってしまった、と。
 誰かに戦いを挑むという行為には、それによって相手のことを理解しようとする心理が、かなり大きく働いているんじゃないでしょうか? 一方的な征服や支配ではなく、対等の立場での全能を尽くした勝負とは、実のところ、非常に高度な相互理解のあり方だともいえる気がします。
 であれば、その結果が人の成長に大きく影響するのも、当然でしょう。人は人への理解なくして成長は望めませんし、誤解から理解への落差が大きければなおのこと、それによって受ける影響の度合いも、大きくならざるを得ないんですから。
 ジャヴェールの表層の意識としては、変わりたいなどとは思っていなかったでしょうが、深層意識では、ヴァルジャンを“敵”と認めた時点で、彼は変わること=救われることを望んでいた…その結果としての、今回の彼の行動があった、と考えるのが、個人的にはしっくりくるように思えます。
 彼は求め、与えられた…とはいえ、すべての苦悩から解き放たれた(死んでたらそうなってたかもしれませんが)わけじゃなく、与えられたものの重みを背負いながら、これからは生きていかなくちゃならないわけです。
 法の執行者として罪を犯すことで、人としての罪から解放されたジャヴェールの、これからの苦悩多き人生に、報いがあらんことを願わずにいられません。





↑ジャヴェ生存によって、テナ公逮捕ENDなんつーフラグが立った気もする管理人に、よろしければ拍手でも。





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